港湾部でこの時期に毎年ある程度は発生する現象の「赤潮」。今年の千葉港の赤潮は例年以上に酷いというので、少し見に行ってみました。


そもそも赤潮とは

 赤潮は、プランクトンの急激な異常増殖により海がそのプランクトンの色素によって赤や褐色に
変色する現象のことを指します。主な原因として有名なのは生活排水に含まれている合成洗剤のリン酸塩が急激に水を富栄養化させることですが、他にも水温の急激な上昇や、工業的な窒素固定による富栄養化、干潟の減少による自然浄化量の減少などが原因として考えられています。要するに自然の許容量を超えた大量の栄養分(これを栄養塩類と呼びます)の流入が原因なのです。
 日本では、瀬戸内海や東京湾、伊勢湾、大阪湾などの河川の多く流入する、沿岸に比較的人口が集まっている内湾部で多く発生します。
 赤潮が発生すると、水中の酸素濃度が低下することや、えらにプランクトンが詰まる事で魚が窒息死してしまいます。またそれら魚の死体と、赤潮本体から異臭が発生します。また、同じような現象として知られる「青潮」は、赤潮がプランクトン自体の色であるのに対し、貧酸素水塊→酸素濃度が低下した水により形成された硫黄化合物の色であることから区別されています。

東京湾・千葉港で長引く赤潮

千葉港に赤潮 悪臭の苦情相次ぐ」ー7/11(火) 9:50配信・千葉日報
 というニュースを見て、住人が苦情を入れるレベルの赤潮とはいったいどれほどかと思い、千葉港へ向かいました。最寄りの千葉みなと駅で下車します。
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あ、もう臭い!
ドアから降りたとたん、熱気とともに海側から強烈な潮風が吹いてきました。魚介の腐った匂い(俗にいう「海の匂い」)を強くしたような異臭に早速呑まれました。
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すでに結構キツい匂いでしたが、ここで引き下がるのも意味が無いので下車します。
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駅前を真っすぐ進んだ先が千葉港なので、ダイレクトに海からの風が飛んできます。
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覚悟を決めて「臭い方向」へ歩いて行きます。
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暴風レベルの臭い海風が吹き付けてきます。まるでゴミ収集車が通過した後のような異臭が続くので時々えずきそうになります。
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海が見えてきました。ここからでも青くないのが分かります。
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千葉港に到着。
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海が赤い!!
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これが悪臭の元の赤潮です。「イメージしていた真っ赤な海とは違う」と思われるかもしれませんが、前述の通りこの正体はプランクトンの色素であるので、真っ赤になるような物とはここでは若干種類が異なるそうです。
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やはり酸欠状態になってしまったのか、無残にも魚の死骸が沢山浮いています。
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ゴミや死骸が集まっている場所では更に激しい臭いになっています。
ボラの幼魚やカワハギ系の魚、スズキなどが息絶えているのが確認できました。

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遊覧船が発着する桟橋周辺も真っ赤です。
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高い所から見下ろしてみます。もはや海水では無くただの泥水のような色になっています。
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ただ見ていてもひたすら臭いだけなので、千葉ポートタワーのある埠頭の方へ行くことにします。
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道中では白猫がじっとしていました。暑いからじっとしているのでしょうが、猫の嗅覚は人間の数万~数十万倍あるそうなので、もし人間と同じ感覚を持っていれば相当臭いと思って耐えているのかもしれません。
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千葉ポートタワーに到着。
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タワーには登らずにこの「人工海浜」へ行ってみます。
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先ほどではありませんが、ここでも海は濁り異臭を放っています。
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海自体はそれほどでもありませんが、ここには沢山の魚の死骸が流れ着いているため、激しい腐乱臭がします。
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死屍累々という言葉がぴったり当てはまる惨状。
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ボラ?の死骸。
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コノシロ、カワハギの死骸。腐って膨らんでいます。
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同じ種類の魚がある程度まとまって死んでいます。これらはおそらく周辺に生息していたものと思われます。
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スズキの死骸。
※魚については寿司のネタ程度しか分からないため、これら名称は後に詳しい方に聞いています。
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打ち付ける度に異臭がする緑色の波。
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ここでは海面はどちらかといえば緑色に濁っていました。
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端に立って先を眺めます。向こうはさらに赤潮が酷いようで、写真からも赤くなっている所が分かると思います。
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最後に真っ赤に染まった入り江を眺めます。

 今回の赤潮は東京湾各地で発生しているそうで、6月末から赤くなり始めたものがこれほど続くのは珍しいそうです。今のところ漁業への被害は無いそうですが、一刻も早く収まってほしいところです。


写真:特筆事項が無いものは本記事中(連載の場合全編)全て筆者/同行者による撮影
執筆:三島 慶幸