小坪井軌道の探索中、房総半島における貴重な樹種を見かけたので、生物学は全くの素人ですが探索の番外編として紹介します。


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ヒメコマツ(ゴヨウマツ)は、寒冷地を好むマツ科の常緑針葉樹です。
ヒメコマツは現在山地性の樹種で、地球の寒冷期(氷河期)には日本列島一帯を含め広く分布していましたが、地球の温暖化(ここ数年の温暖化を指すものでは無い)と共に標高の高い山地へと生育地を移し、現在では本州の東北南部以南の太平洋側、四国、九州の500〜1000m以上の山々に見られる木です。
 このように、現在では比較的高山の温帯域に分布するヒメコマツですが、高い山がない房総半島では、標高300~400m程度で温暖な気候にも拘らず、1万年以上前の氷河期から一部の個体群が孤立して残りました。これらの個体群を遺存分布(遺存種)と呼び、ヒメコマツの中で最も温暖な地域の特異な個体群として学術的に貴重であるそうです。
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(尾根上に成育している貴重な1本。)
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これら房総のヒメコマツは、温暖化や松食い虫の被害で地域個体群ごと絶滅してしまう危機にさらされています。1970年ごろには数千本が生育していましたが、ここ数十年で急速に縮小、次々と枯死し、現在生きているのは75本のみという調査結果が出ています。また分布範囲は房総丘陵主稜線周辺、東の清澄山系から西の高宕山系にかけての東西約15km、南北約4kmの範囲にのみ分布しており、清和西部、清和東部、香木原(かぎはら)、元清澄山、四郎治(しろうじ)、荒樫沢、スミ沢の7地区にのみ生息が確認されているそうです。
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また、生存個体中でも樹勢の衰えているものが多いそうで、個体群の縮小は進行を続けています。千葉県は2002年に県レッドデータブックの「最重要保護生物」にヒメコマツを選定し、専門家らが参加する「ヒメコマツ保全協議会」が保護に取り組んでいます。
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撮影した写真を見直すと、小坪井周辺が国有林で保護されている環境であることを示す看板には必ずヒメコマツの文字がありました。今後の探索中、ヒメコマツの存在にも気を配って行こうと思います。

執筆にあたっての参考ページ
房総のヒメコマツ研究グループ 著
“房総丘陵におけるヒメコマツ個体群の緊急調査”
(http://www.nacsj.or.jp/pn/houkoku/h11/h11-no02.html)
(2018年2月6日閲覧)