田代川最上流の源頭部の探索へ挑みます。そこでの「大発見」とは… 

小坪井林用軌道(第一次)[0 1 2 3 4 5 6 7 補足 番外]
小坪井林用軌道(第二次)[0 1 2 3 4 5 番外]
小坪井林用軌道(第三次)[0 1 2 3 4 番外]
小坪井林用軌道(第四次)[0 1 2 3 4 5 補足 番外 ]
小坪井林用軌道(第五次)[0 1 2 3 番外]
小坪井林用軌道(第六次)[0 1 2 番外]
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関東ふれあわない道()を無心に歩き、いよいよ田代川源頭部への降下を試みます。しかし…

ここ、降りられるのか!?

疲れ切った我々の目の前に現れたのは、高さにして10数メートルの急斜面。しかしその先には田代川の谷底が見えています。すぐに第一次探索の決死の滑落が頭をよぎりました。
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同行者からはもう少し先からアプローチしようと提案されましたが、出来るだけ田代本線の終点部を歩きたいという気持ちと、これ以上登山道を延々歩くのはもうこりごりだという事を告げ、先行して一人斜面に足を踏み入れてしまいました。(13:00 降下開始)

他のメンバーが上から見守る中、およそ3メートルほどは木の根や岩肌を使い、九十九折りならぬ「九十九降り」により進みましたが、とうとう身動きが取れなくなってしまいます。
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動けない絶望ッ!!
上からは全く見えませんでしたが、途中からは切り立った一枚岩の壁になっていました。上の木の根と土に必死に掴まり、もはや自らの最期ともなり得るかもしれない写真を撮影。
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(現在の様子のイメージ)
そしてもう登れないのであれば覚悟して飛び降りねばならないと悟った私は、同行者に「お前らは別ルートから行け!また会おう」と叫び、掴み掛っていた手を放しました。

―飛ぶ瞬間、私の好きなヌコ様なら無事に着地できるのだろうな…などとふと考え、「ネコは優れた平衡感覚で自分の地面に対する位置感覚をとっさに把握し、落下している間に身体をひねって上手に体勢を立て直して着地できる」という話を思い出しました。それなら…
俺にもできる!(多分)

ズ、ズサアアアアアアアアアアアア…ドシン!
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垂直に宙に浮いた時に体制を整え、脚をばねのように曲げて着地しました。上で聴いていたばか者氏からは「到底大丈夫では無い音」のように聞こえていたそうですが、全くの無傷で降下することに成功しました。

源頭部探索

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さて、久々に沢に復帰。まずは田代本線の終点部である事を証明できるものが無いか探してみます。
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降下地点からすぐの所で、早速人工的な孔を発見しました。ここにあった孔はこれまでの孔とは異なり四角い形状をしています。
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田代川の軌道(田代本線)の終点は恐らくここら辺で間違いないのですが、念のためという事でこれまでのような桟橋の痕跡を探しながら沢を下っていきます。
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源頭部?らしい沢の様相。上から杉の大木が墜落して突き刺さっています。
これまでの探索ではそのほとんどが沢を遡上していく内容でしたが、今回は尾根越えを敢行したことが功を奏して、下流(=人里への脱出部)方面に下っていきながらの探索が出来ます。
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途中、他ルートから迂回してきたばか者氏らと合流しながら進むことおよそ30分、遂によく見るタイプの桟橋跡を発見に至りました。
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この周辺の孔はほぼ全て左右対称にきちんと穿孔があります。
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中にはその孔に合わせて木が噛んでしまっている物もありました。
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中にはかっちり嵌っている丸太が土砂を堰き止めてビーバーダムを形成しているようなパターンもありました。あたかも「現役時代にはこのように孔を使った」という事を示してくれているかのようです。
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孔に嵌っていない丸太もちらほら転がっています。「何となく表面が人工的に加工されてるようにも思えるな」と眺めていると、驚いたことにこれら丸太の断面は人為的に切断されたとしか思えないような形状をなしていました。軌道時代の物では無いかという期待が度々脳裏に浮かびますが、全く確証の無いこれら丸太はオーパーツ的な扱いに留めておくのが無難でしょう。
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地図無しでは迷子になってしまいそうな程どこもそっくりな渓谷ですが、その全てが美しいと言っても過言ではないのが房総の谷です。
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しばらく桟橋の孔が連続して続きます。はっきり痕跡があると「一度は人が入っている土地」だということと、正しいルートで探索できているという保障から、2つの意味で安心して探索が出来ます。

大発見!

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(13:46 現在地)
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再び現れた、桟橋跡の孔に嵌っている丸太。1つや2つであれば「偶然」で片づけられるのですが、こう何本も続けば気になって仕方がありません。
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!!!
何とここにきて2つの丸太が直角に重ねられている箇所が現れました。これはもしかするともしかしれないと思い、大急ぎで駆け寄ります。
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ほわあああああああああああああああああああ!
丸太の重なっている箇所を覗きこむと、金属製の釘状の物体が上の丸太から生えていました。更には下の丸太には釘状の物体の根元部分と、人為的な孔が見られます。これは間違いない…
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小坪井軌道の…
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現存木製桟橋(跡)!!!!!
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防腐処理をされているからなのか、皮を剥いだ状態の丸太は表面が黒くなっています。
これは鉄道の枕木のようにクレオソート油(※)で防腐されている可能性があります。
(※コールタールを蒸留して得られる油で、処理後の外観は黒くなるのが特徴です。)
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これまで桟橋の孔は各所で数多く発見し、時には木材が残っている箇所もありましたが、このように木材がそのまま残存している場所は初めてです。当初は湿気のある環境で数十年も木材が持つ訳がないと思っていましたが、防腐処置がなされている上、その湿気がかえって木材を長持ちさせている可能性も十分に有り得ます。
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合調隊一同のテンションは最高潮。予想外(予想以上)で前代未聞の発見となりました。
(ここまで来てよかった…!)
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鉄製の釘状の物が特にはっきり残っている場所も発見。形状からしてこれは間違いなくかすがい
(鎹)(名古屋市北部の市)でしょう。鎹は木材同士を直線または直交に繋ぐ際に、両端を木材にそれぞれ打ち込む形で使うので、この丸太が木製桟橋の建築に用いられた可能性には最も理に適っている部品と言えます。

そもそも桟橋はどのような物だったか

 今回、遂に木材が一部残存している桟橋を発見しましたが、これまでの探索でも各所で桟橋の孔を発見してきました。ということでこれまでの痕跡から軌道の桟橋の形状を推測してみます。
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今回発見した丸太があったのはこのようなタイプの跡。発見した丸太の配置を元に考えると、丸太を寝かせて「梁」とし、その上に桟橋を形成していたものと考えられます。
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という訳で、手抜きですが、何となくのイメージを作るために模型で再現してみます。ちょうど手元にあった割り箸を適当な長さに折ったものを丸太に見立てていきます。
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鎹の打ち方と、実際に残存していた木材の配置を元に組み上げ、レールを敷いてみるとこのような形になります。(本当にこのような形状でレールが敷設されているとなると軌框になってしまい、発見しているレールと若干矛盾してしまうのですが、そこは雰囲気程度で…)
木材を交差させている所と、長さに遊びを持たせて並べている所に鎹を打ち込んで固定していたと思われます。
※実際の高さは場所によってまちまちですが、今回は2段だけ再現してみました。
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トロッコ風の車両を置いてみます。こうしてみるとジェットコースターのようです。
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今回発見した桟橋跡から再現した軌道の桟橋。キャンプファイヤーのように重ねた丸太を固定させることで安定感を持たせています。しかし流れが激しかったり、水量が多い場所では水流を堰き止めてしまう上に、軌道の路盤に高さを持たせたい箇所では木材が増えてしまうなど、場合によっては不利な配置であるといえます。そこでもう一つのタイプの孔の存在が活きてきます。
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それがこれ、一枚岩に丸く穿たれているタイプの孔です。このタイプの桟橋跡も同じように各所で多数発見しました。主にこれらは流量が大きく川幅が広い所や、高さが必要な場所に点在していることが多いのが特徴です。
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こちらは既存の画像で桟橋のイメージを再現してみます。丸い孔に丸太を差し込むことで垂直な足場から桟橋を組み上げていたはずです。こちらの形状の桟橋であれば、水流を堰き止めてしまうことなく、また木材を多量に使わずに軌道の路盤に高さを持たせることが出来ます。
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この桟橋の構造は現在の高架橋でも用いられるラーメン構造、特にボックスラーメン構造に近似したものと言っても良いでしょう。これらの推測と2種類のタイプがある桟橋跡の孔の形状から、小坪井軌道には2タイプの桟橋があり、それを場所や環境で使い分けていたであろうという結論に至りました。

田代川最奥の…

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桟橋木材の残存発見の余韻を残しつつも、探索完了を目指して進みます。岩肌に規則的に見える桟橋孔がまるで導いてくれているようです。
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再び木材が埋まっていました。
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この木材には明らかに人為的に穴を開けている窪みが見られました。
…そうです、3時間前に小坪井沢で同じような木材を見つけていました。
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この発見をもって小坪井沢にも軌道由来の木材が残存している事が確定しました。
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ぐねぐねと蛇行している沢をここまで進んできました。そして目前にはずっと渇望していた…
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最奥隧道

続く
(※他ブログに飛びます。)